第109章 ……………あ
「無駄話を省いて良いならこちらとしてもありがたい。とっととここに来た要件を話してもらおうか!」
「社長があんまりカリカリしてるとこ周りに見せるのは良くないよ?経営が上手くいってないんじゃないかって思われちゃうかもね。あっ!もしかして今、図星突いちゃったりした!?ごめんね僕って鋭くて!」
「なんだとこの青二才が!もう一度言ってみろ!」
『ま、まあまあ!』
社長が暴力事件を起こす前に止めに入った。しかし、なんだろう。自分で仲裁しておいて、既視感がすごい。深く考えずとも、その正体にはすぐに気付いた。胸の前辺りで両手の上げ下げを繰り返し、まぁまぁといつも言っているのは龍之介だ。楽と天の言い合いを仲裁する、TRIGGERの空気清浄機、十龍之介だ。
私には空気を清浄する機能など付いていないので、さっさと話題を変えてしまおう。
『了さん、ずっと御礼をと思っていたんです。病院で、あんなに良い部屋を用意してくださってありがとうございました。お陰様で、快適過ぎる入院生活を送ることが出来ました』
「あ、そう。良かったんじゃない?」
『それで、その…快気祝い、なのですが。すみません…他の方は半返しで統一しているんですけど、入院費の半分を返すとなると私の生活が苦しくなるどころの話ではなくって』
「君って本当にくだらないこと考えるよね。そんなのこっちが勝手にしたことなんだし、べつに何か返そうなんて思う必要ないから」
その言葉に、ほっと胸をなで下ろす。結局、どうして彼が必要以上に親切をしてくれたのか理由は分からず仕舞い。もしかすると、過去の私に対する罪滅ぼしのつもりだったのだろうか。正解は、了本人のみぞ知る。
『破産せずに済み良かったです。それにしても、貴方は本当に優しくなって…。人というのは、変わろうと思えば変われるものなのですね。
そうとは知らず、すみませんでした。楽を誘拐して私を半殺しにした犯人のバックには、貴方がいるものだと疑うどころか確信までしちゃったんですよね私』
「お前は、言って良いことと 言っては駄目なことと 言わなくて良いことの違いくらいは考えた方がいいね。それらの区別がつかない奴は子供と一緒だ」
『……言わなくて良いと分かっていながら、それでも口にしたくなってしまう人間は?子供ですか大人ですか』
「あはは。そりゃ病人って呼ぶんだよ!」
