第109章 ……………あ
怪我の経過は良く、私はほどなくして退院した。完治ではないものの、仕事復帰に問題はない。またTRIGGERの3人と働くことが出来ると息勇んでいたのだが、今日の付き人は姉鷺が担当する運びとなる。それが何故かというと、とある人物から私と社長に対し、会いたいという事前連絡があったからだ。その人物が人物なだけに、私と社長は申し出を無下にすることも出来ずにいた。なのでこうして、社長室で2人雁首を揃えて彼を待ち構えている。
「……分かった。予定通り、ここに通してくれ」
『内線、受付からですか?』
「あぁ。奴が来たらしい。……はぁ」
『憂鬱です?』
「当たり前だ。あれが持ってくる話なんぞ、どうせろくなものじゃないに決まっている」
『そんなことありませんよ。彼は、以前とは随分変わりまし』
「はーーい!来てやったよ!月雲さんところの了だ!」
私の言葉を遮り、ノックもしないで了は部屋に乗り込んで来た。というか、さっき受付から到着の連絡をもらったばかりだというのに。ここへ来るのが早すぎないか。
「これはこれは。どうもこのような場所にご足労頂いてありがとうございます」
「あーそういうのいいから。無意味なくせに長い挨拶に付き合うほど僕は暇じゃないんだ。それより、飲み物出してくれるなら前の珈琲はやめてね。代わりに、そうだなぁ…エリがうちにいた時にいつも仕事部屋で飲んでた紅茶!あれと同じのでいいよ」
言いながらドカっとソファーに腰を落とす了を前に、私と社長は思わず舌を打ちそうになるのをギリギリのところで堪えた。