第108章 待ってられるかそんなもん
「なんでだ…!あんた、言ってただろ。俺のことを、愛してるって。なのに、なんで…っ!」
『す、好きだけど、愛してると、思うけど!』
「はっ?思うってなんだよ!」
『だ、だって!恋なのかって言われた自信なくて!楽と一緒にいても、心なんか全然休まらないし!手汗いっぱいかくし、なんか緊張するし、たまに心臓がずくんって痛くなるし!こんなの恋じゃなくない?!』
「それ恋って言わなかったら他に何て言うんだよ!あんた俺のことめちゃくちゃ好きじゃねえか!」
互いに言いたいことを激しくぶつけ合い、肩で息をしていた。さぁ次はどちらが、どんな言葉を口にするのかと私達は完成し合う。
「ただ、自分に素直になればいいだろ。なんであんたは、いつも自分から苦しい方苦しい方に歩いてくんだよ」
『それは、私がTRIGGERのプロデューサーだからじゃないですか?』
「いま春人を出すな」
私は小さく肩をすくめて薄く笑う。楽は、どうすれば私を頷かせることが出来るかと必死のようだ。私もまた、どうすれば彼に諦めてもらうか思考する。
『楽。もしも私達が付き合ったとしようか。そんな中、カメラの前で誰かが貴方に質問を投げ掛ける。あなたに恋人はいますか?って。
そのとき楽は、なんて答える?』
楽は、私が望む答えを分かっているはずだ。だからか即答はせず、悩み抜いた末に口を開いた。
「いるって、答えるよ。俺は、たとえカメラの前であっても嘘は吐きたくないたちだからな」
『そうだよね。うん。知ってたよ』
私1人にすら嘘を吐けない彼が、多くのファンに嘘の言葉を紡ぐことなど出来るはずがないのだ。