第108章 待ってられるかそんなもん
俺は、扉の前で深呼吸する。まさか、IDOLiSH7が勢揃いで見舞いに来ていることはないだろう。
昨日までの流れを考えると、俺はまた追い出されるのだろうか。IDOLiSH7の中にもエリを好きな奴がいて、そいつがこの中にいたらアウトだ。とりあえず思い付くのは、環。それから、大和も怪しいと俺の勘が言っている。
ごくりと唾を飲み下し、俺はゆっくりとノックした扉を開く。
「おっ、八乙女じゃんか!」
「い、和泉か…!」
「HELLO!IDOLiSH7エレガント担の、ワタシも居ますよ」
「六弥!
そうか、お前らだったか。大当たりだ…!」
「当たりって?」
「??ソシャゲのガチャで、最高レアでも引き当てたのでは?」
この時、俺がどれくらい嬉しかったのか理解出来る者など絶対にいない。
が、喜んだのも束の間だった。先ほどまで椅子に腰掛けていた三月が立ち上がったのだ。
“ あの言葉 ” とともに。
「よし。じゃあそろそろ…」
「っ、お、お前もか!お前も、俺に帰れって言うつもりなのか!」
「は!?いや、じゃあそろそろメロンでも切るかなって言おうと思っただけだよ!てか、帰れなんて言うわけねぇだろ!せっかくこんな広い病室なんだし、八乙女も時間あるだけ居たらいいじゃん。あ、もしかしてオレらの方が邪魔だったりする!?」
「…っ、」
「……えーと。なぁ、ナギ。オレ、なんか八乙女に泣かすようなこと言った?」
「残念ながら、ワタシにも理解不能です」
目頭を押さえる俺に、三月はそっと椅子を勧めてくれた。