第108章 待ってられるかそんなもん
俺を案内してくれるのはまた、あの看護師である。毎度毎度見舞いに来るくせに、いつも5分やそこらで帰る俺のことをどう思っているのだろう。
「中崎さんは、色んな方から愛されているんですね」
「え?」
「お世話をさせていただく際、よくお話をしてくださるんですよ。お辛いはずなのに弱音の1つも言わないで、それにいつも笑顔で…」
「はは。あぁ、そうなんだ。あいつは、めちゃくちゃいい奴なんすよ」
好きな人が褒められるというのは、自分が褒められるよりも嬉しいものだ。こんな気持ちが味わえるのも、恋をしている者の特権なのであろう。
「ただ…その、まだ絶対安静なのに、筋トレをするのはやめて欲しいんですけどね」
「は!?き、筋トレ!?」
「ええ。お止めしても、下半身は怪我していないからと、負荷の強い屈伸をやめてくれなくて」
「俺から言っときます」
看護師はお願いしますと、やや本気の目で言った。
「でも、あぁいう素直で楽しい方だから皆様に好かれるのでしょうね。職業柄、芸能人の方はたまに目にしますが、Re:valeさんに続いてŹOOĻさん。今日はIDOLiSH7さんがお見えになっ」
「IDOLiSH7……」
「は、はい。IDOLiSH7の内の、お2人がお見えになっていますよ」
「なって、いますってことは、もしかして…。それって、今の話だったりしますか」
看護師は首を傾げて、はい。と答えるのだった。