第2章 …なぁ。俺達、どこかで会ったか?
「…まぁ、口では何とでも言えるよね」
「天の言う通りだ。具体的に、お前は俺達に何をもたらしてくれるんだ?」
やはり具体的で、目に見える結果の提示を求めてきたか。
『…手始めに、1ヶ月後のブラックオアホワイト。貴方達を優勝に導きます。
私が作った曲、私が作ったダンス。それを引っさげて出場して下さい』
「「「!!」」」
彼らは既に、JIMAの新人賞を受賞している。従って、ブラホワに出る権利を会得しているのは、把握済みである。
「新曲ってお前…あと1ヶ月しかねえんだぞ!」
『曲とダンスのイメージはほぼ固まっています。あと2.3日で あげてみせますよ』
「まだ曲も出来てねぇのかよ!!」
「…約一ヶ月で、ボク達に歌もダンスも仕上げろって?ふざけてるでしょ」
『私も努力するんです。貴方達も、それなりの頑張りを見せて下さい』
「あはは…言ってくれる」
「おい龍。笑ってる場合じゃねぇぞ」
『とりあえず、3日後に出来上がった曲を聴いてから考えて下さい。貴方達をその気にさせるのは、私の仕事です』
私が話をまとめようとした所で、社長が場を強引に切り上げる。
「決まったらさっさと出て行け。俺はお前達と違って忙しいんだ」
『…失礼しました』
私は口の悪い社長に頭を下げると、3人を連れて部屋を後にした。
扉を閉めると、一応もう一度挨拶を繰り返す。
『…これで分かって頂けたと思いますが。
私は振り付け師でも、まして不審者でもありません。貴方達のプロデューサーになりました中崎春人です。
よろしくお願いしますね』
「…よ、よろしく」
人がせっかく笑顔を貼り付けて、愛想を振りまいているというのに
挨拶を返してくれたのは龍之介だけだった。