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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第108章 待ってられるかそんなもん




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そのまた翌日。俺は例のごとく、タクシーの中にした。Re:valeに続きŹOOĻにも病室を追い出されてしまった為、結局まだ一度もまともに見舞えていない。

今日も昨日と一昨日と同じく、公演は2回あった。こそこそと合間に抜け出そうとする俺に、ついに姉鷺は何も言わなくなった。ただ、宇宙の全てを悟ったみたいな仏顔をしていたことだけが引っかかる。
天と龍之介は、まるで可哀想なものを見るかのような瞳を俺に向けていた。

誰に何を思われたって構わない。俺は今日も、ただ愛しい人に会いに行く。


「…はぁ。何を焦ってんだ、俺は」


焦って気持ちの擦り合いなんてものをしなくても、俺達はそれなりに互い理解しているはずだ。なんと言っても、もう3年以上俺達は共にいるのだ。その絆は、ダイヤモンドよりも硬い。平坦な道だけではなかった。荒波も、高い壁も、俺達は一緒に乗り越えてきたんだ。

俺はエリの強いところも、弱いところも知っている。エリは俺の良いところも、その逆にダサいところも知っ…


待てよ。と、俺の頭の中に遠い記憶が蘇る。

あれは、いつだったか。春人が休日に、俺の家にあがったことがあった。
【47章 1098ページ】

その時にあいつは、迷い込んだ脱衣所で何を見た?
そうだ。奴は発見してしまったのだ。俺の中で持て余した情熱があらぬ形で飛び出してしまった残骸(手洗いしたパンツ)を!


「〜〜〜っっ…!」


苦すぎる思い出を前に、俺は頭を抱えた。

惚れた女に、男がこの世で最も知られたくない恥部を惜しげも無く曝け出した経験のある男など、世界中探したって絶対にいない。

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