第108章 待ってられるかそんなもん
一般病棟と特別病棟を繋ぐのは、天井と壁がガラスで囲まれた空中通路。看護師がカードを通すと、かかっていたロックが解除される。
その後、ご丁寧に部屋の前まで案内してくれた。
いよいよ、エリに会える。ここに留まれるのは、後せいぜい3.40分だ。俺は逸る気持ちで扉を手の甲で叩いた。
「あっ、楽だ!やっほー!昨日ぶり!」
「やぁ。引き金をひいたのは、観させてもらったよ。会心の出来だったじゃない?」
どうして、この2人がここにいるのか。予想外の展開に頭が追い付かなくて、言葉を返す余裕がない。
「びっくりだよね!まさか結末が観る回によって変わるなんてさ!脚本も、演じたTRIGGERもすごいけど、Haw9の演出もさすがだーって今3人で話してて…!って、あれ?楽、固まっちゃってる」
「どうしちゃったのかな?とりあえず、アレ 決めてみる?」
「いいね!せーーの!」
「「どうも!出張Re:valeでーす!」」
『2人とも。ちょっと楽に考える時間をあげて』
エリは、身体を起こすことなく2人に告げた。
春人ではなく、エリの姿だった。頭に巻かれた包帯が痛々しくて、顔も昨日より少し腫れている。あれだけ殴られれば当たり前なのだろうが、改めて見ると悔しくて。守れなかった自分が情けなくて、泣きたくなった。
ベットの隣まで歩いて行って、エリの頬にそっと指を触れさせる。
「……痛むのか」
『え?あ、いや、』
エリが何かを答える前に、誰かに身体を後ろへ ぐんと引かれる。
「楽く〜ん?先輩に挨拶もなしでエリちゃんとイチャイチャって、そんなの問屋が卸しても僕が卸さないよ?」
「オレだって卸さないぞう!!」
「す、すんません。こんにちは、百さん千さん…!」