第14章 俺は、あんたより すげぇアイドルに ぜってーなってやる!
「母親が死んで、あんたが引っ越して、理までいなくなって…。さすがにちょっと 心がボキってなりそうだった。
なんで俺ばっか、大切なもの なくなってくんだ!って」
環は自分の胸の上から、服をギュッと掴んだ。その悲痛な表情は、もう本当に見ていられなかった。言葉を出せば、泣いてしまいそうだった。
「でも、俺は立ち止まんねぇで頑張った。頑張れたんだ。なんでか、分かる?」
私がゆるゆると首を振ると、彼は誇らしげに笑う。
「あんたが、言ってたから。
頑張ってる俺が、かっけーって」
きっと、彼は。私が想像出来ないくらいの 苦悩と苦難 絶望を乗り越えて来たのだろう。
それなのに、今こうやって私の前で笑っている。たくさんの傷を負った心を隠して。
私が昔言った、何気無い一言を ずっと 大切に…大切に、まるで宝物みたいに胸の中にしまって。
『…タマちゃん。出会った時…すぐに分かってあげられなくて、ごめんね。
でも、またこうやって会えて 話せて良かった。
凄い…凄いねタマちゃんは。私、本当にびっくりしたよ。だって、タマちゃんが、めちゃくちゃ格好良くなってるから』
ありがとう。また、私の前に現れてくれて。
また、私に 変わらずに笑いかけてくれて。
「へへ。…えりりん、俺、カッコいい?」
『うん。もう超カッコ良いよ』
「じゃあ、いつ結婚する!?明日!?」
『………』
うーん。こういうブッ飛んだところも、相変わらずかぁ。