第108章 待ってられるかそんなもん
「先に言っとくけど、お見舞いは明日にしてもらうから」
「なんでだよ。俺は今日行くぞ」
「はぁ…言うと思ったけど。あのねぇ、今日は午前と午後の、2回公演なの。両公演が終わるのは夕方の18時よ。病院の面会可能時間にはギリギリ間に合わないわ。お願いだからワガママ言わないでちょうだい!ほら、分かったら早く準備し」
「公演の合間には3時間あるだろ。その間に行ってくる」
「だーめ。それでなくてもアンタは、昨日 関係者各位に挨拶出来てないのよ?今日こそは、その無駄に良い顔貸してもらうから」
まさか、ここまでみっちりスケジュールを押さえられてしまうとは。
「…俺の為に命賭けて身体張ってくれた奴を見舞うのが、我儘だってのか」
「アンタ。聞こえの良いこと言ってるけど、本当は早く会いたいだけなんでしょ。姉鷺さんの目は誤魔化せないわよ」
まさに図星で、俺は体の横で握り拳を作り ぐっと力を入れた。
そして、一般公開がいよいよ始まる。第1回公演午前の部で俺が撃つのは、天である。午後の公演では龍之介の方を撃つ。
自分が天使であることを打ち明けて、銃を構える。相手の心臓に照準を合わせて、引き金をひく。
「はい、お疲れ様。じゃあ早速だけど、ロケ弁食べちゃってちょうだい。それからすぐ…
……あんまり訊きたくないんだけど。ねぇ、楽は?」
「あ、それは、えっと…
挨拶回りなら俺達が代わりにしっかりと回りますから!どうか見逃してあげてください!」
「そんなこと訊いてないでしょ!あのお馬鹿はどこに行ったのかって訊いてるの!!」
「わざわざボクらが言わなくても、姉鷺さんの目は誤魔化せないでしょう?楽なら…
ボロボロに傷付いた、お姫様のところですよ」