第107章 引き金をひいたのは
「…あぁ、一時はどうなるかと思ったけれど。どうやら舞台は無事に始められるみたいだね。まったく、寿命が5年は縮まったよ」
「自分なんて、10年は縮まりましたよ!でも良かった。これでようやく一息つけますね」
鷹匡と脚本家は、エリからの吉報に安堵する。しかし、俺達3人の表情は硬いまま。
「ねぇ。アンタ達はこれ、どう思う?」
「率直に言って、違和感を持ちます」
「俺もです」
「やっぱりそうよね…」
鷹匡は立ち上がり、どういうことかな?と説明を求めた。それに、まずは姉鷺が答える。
「中崎は、こんなにも丁寧にまとめたメッセージを身内に送るような子じゃないんです」
「……ちょっと、意味がよく分からないな」
「彼女がいつもボクらに送って来るメッセージは、いつも3文字や5文字程度なんです。しかも、今回は御丁寧に3人全員に送っています。こんなことは、これが初めてです。誰か1人だけに送り付けておけば、あとは勝手に広まるだろうくらいにしか考えていないのが彼女です」
「まさか」
「天の言っていることは本当です!いつも “平気” とか “ヤバイ” とか、そういう類の単語しか送って来ないんですよ。そんな彼女が、このような長文を送ってくるなんて、ありえないと思います」
「なんというか、随分と苦労しているんだな。君達は…」
ごくりと唾を飲む鷹匡を前に、姉鷺が慌てて取り繕う。彼女が非常識なメッセージを飛ばすのはあくまで身内だけで、外部には几帳面過ぎるほどきっちりと対応している!と。