第107章 引き金をひいたのは
【side 十龍之介】
— 数十分前のレインボーアリーナ —
「いやぁ、今日のゲネ楽しみにしてたよ。TRIGGERの今後を大きく左右する仕事になるだろう。君達のことだから何も心配していないが、よろしく頼むよ」
「はい!精一杯、努めせていただきます」
楽屋に来てくれた支配人に、俺は笑顔で答える。胸中の不安など、おくびにも出さないで。
「ところで楽くんの姿が見えないけど、トイレかどこか?」
「えっ!?え、えぇと」
おくびくらいには、出てしまったかもしれない。その時、天が隣に現れて涼しげな声で告げる。
「トイレなんて行きませんよ。だってボク達は、アイドルですから」
「はは!なるほど!これは一本取られたなあ。
でもその様子じゃ、本当に何も心配いらなかったみたいだね。私は大人しく見守らせてもらうとするよ」
「御心遣い感謝します。最高の時間を過ごしていただくこと、お約束しますから」
天が綺麗に笑ったのを見て、支配人は満足そうに楽屋を後にした。ぱたんと扉が閉まると同時に、俺と天と姉鷺、そして九条鷹匡と脚本家の全員が重い息を吐いた。
「はぁ。ほんとに、寿命が縮まる心地ね」
「天、ありがとう。間に入ってくれて助かったよ」
大丈夫だと天が答えたその時、テーブルに集めておいた俺達の携帯が鳴る。俺と天と姉鷺のスマホに、同時にメッセージが入ったのだ。エリからの連絡と見て間違いないだろう。5人が競うようにしてテーブルの周りに集まった。そして、3台の携帯のロックを瞬時に解除。
やはり、エリからのメッセージが入っていた。全員でその内容を確認する。
“ 楽は無事に見つかりました。これから楽とそちらに向かいます。開演までには間に合うので、心配しないで待っていてください ”