第14章 俺は、あんたより すげぇアイドルに ぜってーなってやる!
外門を飛び出して、すぐに左右を確認する。すると、視界の端にエリの後ろ姿をなんとか捉えることが出来た。
俺はそっちの方面にダッシュする。
彼女が角を曲がる度に、何度も何度も姿を見失いそうになるが。必死に足を動かしては、その背中に食らいつく。
声が届く距離まで来たら、焼け付く喉の痛みを殺しながら叫ぶ。
「はっ、…はぁ、っえりりん !」
『!!
タマちゃん』
溢れんばかりの目をした彼女が、俺を捉える。
『どうしたの、ここまで1人で追い掛けて来たの?びっくりし』
「っ…、お別れ って、なんだよ!!」
まだ全く整っていない息だったけど。落ち着くのを待ってなどいられなかった。
「っ、なんで、…俺に、嘘 ついたのかよっ」
『…嘘じゃないよ。本当の事を言わなかっただけ』
まるで汚い大人みたいな事を言う彼女。俺はこの時を境に、余計に嘘が嫌いになった。
優しい嘘なんて、全く欲しくなかったから。
「なんで…、!あんたまで、俺と理を置いていくのかよっ!なんで…俺の大切なもんは全部どっかに消えちまう!」
俺の手の平に残っていた、ほんの少しの大切。それはまるで、サラサラの砂みたいに。簡単に指の間からこぼれ落ちる。
そして、俺の手の中には何も残らない。
『…ごめんね。私、親の都合で引越しをするんだ。黙って居なくなろうとして…ごめん。
2人とサヨナラするのが、辛かったから…』
「嘘つき!俺にさっき、またねって…言ったくせに!」
今よりもっと馬鹿だった俺は、自分だけが辛いって思ってて。相手も自分と同じぐらい悲しいとか、辛いんだろうな、とか 思いやれる余裕なんかなかったんだ。
だから、言いたい事全部、彼女にぶつけてしまった。