第14章 俺は、あんたより すげぇアイドルに ぜってーなってやる!
「どーやったら、気になってる奴が “ 特別に好きな人 ” だって分かんだろ…」
俺にはまだ、母や理を思う気持ちと、エリを思う気持ちの区別の付け方が よく分からなかった。
『…タマちゃんにもし、毎朝起きた瞬間 毎回思い浮かべちゃうような人がいたら…
その人が、貴方の特別な人かもしれないね』
夕陽に染まる、エリは とても綺麗だった。いつまででも この顔を眺めていたいって思った。でも、俺は告げる事が出来なかった。
自分には、目が覚めた瞬間に 思い浮かべる人物がいる事。
「あらあら、理ちゃんそんな所で寝ちゃってるの?もう晩御飯の時間なんだけど」
いま部屋に入って来たこの人こそ、この施設の心理士 兼 職員だ。
『え、もうそんな時間か…。私もうそろそろ帰らなくちゃ。おばさん、理ちゃんの事お願いね』
「はいはい。晩御飯は置いといて、もう少し寝かせてあげましょうか」
理を心理士に預けて、立ち上がるエリ。
帰る彼女を、玄関まで送るのが 俺と理の日課だった。でも、今日は俺1人でその勤めを果たそうとする。しかし
『タマちゃん。今日は、いいよ。理ちゃんと一緒にいてあげて』
俺は、心理士の腕の中でスヤスヤ眠る理を見上げて 頷いた。
「…ん、分かった。またな、えりりん」
『うん。……またね。タマちゃん』
彼女の背中が見えなくなったら、すぐさま心理士に訴える。
「理、俺が運ぶ」
「もう環くん。あなたじゃ無理でしょー」
「無理じゃねぇし」
「それより…ちゃんとお別れ出来て偉かったわね。少し心配してたのよ。あなた達、あの子によく懐いてたから」
この人が言っている意味が、よく分からなかった。
「……お別れって、なに」
「!」
大人が思っている以上に、子供は空気が読める。特に、大人が何か 自分達に言ってはいけない事を 言ったとき。
大人の、あ しまった!みたいな顔は、すぐに分かってしまうのだ。
「!
待って、環くん!」
俺は、1人施設を飛び出した。