第106章 ねぇよ
「春人くん。Lioとして、表舞台に立つとどういうことになるのか。本当に理解してるのか?」
「喉を患っていようが関係ない。世間はまた、キミを求めるよ。それに応える覚悟が、本当にある?」
龍之介と天は、真摯な瞳をこちらに向けた。対する私は、2人に満面の笑みを返す。
『愚問だよ。私がどれだけ惨めでボロボロになろうと、貴方達がその分、より高い場所で輝けるんなら本望』
「う、うぅ…アンタのTRIGGER愛、確かに見届けたわ…!」
「え?な、何?プロデューサーさんって女の人だったの?しかも代役って、マジ?」
良いことを言ったはずなのに、いまいち締まらなかったのは気のせいだろうか?
と、鷹匡が生き勇んだ声を上げる。
「そうと決まれば、舞台演出を君用に変えないと!歌のパートも変えるから、2人はすぐ覚えて!Lioは早く衣装を」
『あぁ。でも私、多分ステージには立ちませんよ』
その場にいた全員が、間の抜けた顔をする。今度は予想通りの反応が返って来て、少しだけ満足だ。
『だって “ 引き金をひいたのは ” に立つのは、天と龍と、楽ですから』
「き、君は何を言ってるんだい。だから、その八乙女くんがどこにいるのか分からないん」
『私、分かりますよ。楽の居場所』
私は言って、長机の上にスマホを取り出した。それを操作しながら、5人に説明する。
『ほら、天が轢き逃げされたことがあったでしょう?もうあんな怖い思いごめんですから、今後はどこで何が起きても居場所を把握出来るように、3人にはGPSを付けてたんですよ』
「「体内に!?」」
『2人の期待に添えなくて申し訳ないですけど、貴方達の携帯にですよ。体内って、発想が怖い』