第106章 ねぇよ
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そして、ゲネプロ公演の日はやって来た。あと数時間もすれば、ここレインボーアリーナのステージにTRIGGERが立つ。しかし、私はまだ彼らと顔も合わせていなければ言葉も交わしていない。ゲネということもあり、かなりの人数の重役や関係者を招いていた。本番直前の3人に、バタバタと挨拶をさせて回るわけにはいかない。つまり、私がそれを行なっていたのだ。
歩いているか走っているか微妙な速度で、私は廊下を行く。向こうから姿を現したのは、Re:valeの2人だ。その後ろには、IDOLiSH7も勢揃いしている。
「あっ、春人ちゃん発見!さすがに忙しそうだね」
『実はかなり。すみません、本当はゆっくりお相手したいのですが』
「ふふ、駄目。僕らのこと、他の何よりも大切にしてくれるって約束したでしょ?」
『え?してません』
冗談交じりに言った千を、大和が嗜める。
「あんた、この切羽詰まった顔 前にしてよくそういう冗談言えるな…」
「つい ね。もっと切羽詰まった顔が見たくなってさ」
「そういうとこ…」
大和後ろから、陸がひょこっと顔を覗かせる。
「天にぃはまだ来てないんですか?見てくださいこのチケット!天にぃが、オレに観に来て欲しいって手渡しでくれたんです!」
『ふふ、良かったですね。天が来たら、七瀬さんが来てくれたことを必ず伝えます』
次は、環が綺麗な挙手を見せ前に進み出る。
「中崎さん、忙しい?でも、これだけ聞いて!
えーと…今日は、お招きいただきまして、誠に有難うございます。舞台の大成功を、観客席で心から、祈っております!」
『はは、どうもご丁寧に。こちらこそ、お忙しい中ご来場いただきありがとうございます』
「すごいよ環くん。よく言えたね!
実は昨日寝る前、一緒に練習したんです」
「あーー!そーちゃん!なんっでバラすんだよ!」
「えっ、あ!言っちゃ駄目だった?ご、ごめんね!」