第14章 俺は、あんたより すげぇアイドルに ぜってーなってやる!
「っ…、凄い!凄い凄い!アイドルだぁ、えりりんはアイドルだぁ!」
『あはは、まだ違うけどね。でも ありがとうございましたー』
彼女は ぺこり、と大きく頭を下げた。理はそんな彼女に、興奮した様子で拍手を送り続けていた。
「私も…、私も、いつかアイドルになりたい!
いっぱい頑張ったら、いつか私も えりりん みたいに カッコよく踊って歌えるようになるかな!?」
『うん、たくさん頑張ったらね』
エリは、優しく理の頭を撫でてやっている。
「ねぇ!来週から、私にピアノ教えて!」
そうせがむ理に、彼女はしばらく言葉を返さなかった。でも、やがて優しい瞳を向けて言った。
『…来週と言わず、今からでも』
いつもなら、もうエリは帰る時間だった。でも何故か今日は、いつまでも それこそ理が疲れ切って眠ってしまうまで相手をしてくれた。
「理、寝ちゃった」
『…うん。たくさん弾いたからね』
理は、安心しきった表情で。頭を彼女の膝に預けている。そんな理を、心の底から愛おしそうに見つめて 髪を優しく撫でつけるエリ。
その横顔を見ていたら…聞かずにはいられなかった。
「なぁ… “ 好き ” って、どんな感じ?」
『タマちゃんが、アヤちゃんを思う気持ちの事だよ』
確かめたかった。自分の中に芽生えつつある、この感情の正体を。幼い俺は、彼女に聞くという幼稚な手段しか使えなかったけれど。
「そういうんじゃ、ない。そういう好きじゃなくて…、こう、もっと 特別な、1人1個しか持ってねぇようなやつ!」