第106章 ねぇよ
しばらく沈黙が続き、まずは龍之介がぷはっと息を吐く。よほど根を詰めて読んでいたのだろう。
「そうか…天使役の楽は結局、獣人の長である俺を撃っちゃうのかぁ」
「実際、難しい選択だよな。出来ることなら、どっちも助かって欲しいって思っちまう」
顛末について話し合う龍之介と楽。しかし、私と天は驚きの表情で2人を見つめた。
「ねぇ、待って。ボクが読んだ脚本では、楽が撃ったのは人間側のボクなんだけど」
「は?」
「えっ!?」
『私の脚本も、天と同じ内容ですよ』
そうして私は、持ち上げた本を3人に向ける。そこで私達は、同時にあることに気付いた。
龍之介と楽の脚本には、DAY1。私と天の脚本にはDAY2と、それぞれ表紙に記されてあったのだ。
ほぼ真実に行き着いた4人は、笑顔になるのを我慢出来ずに鷹匡を見た。その期待に応えるようにして、彼は両手を広げ答えあわせを始める。
「気付いたかい?そう。この舞台は、観る日によってその結末を変える!観客達は、2度劇場に足を運びたくなるに違いない。
ふふ、ドキドキするだろう?この前代未聞の挑戦に、心が踊らない君達ではないはずだ!さぁ、一緒にこの舞台を成功へと導こうじゃないか」
鷹匡の舞台演出は、もうこの時も始まっているのかもしれない。身体中を何かが駆け巡り、ぞくっとした。
「っ、…と、鳥肌が…!」
「タイトルも、ボク達にはお誂え向きだよね」
「あぁ。タイトルも内容も気に入った!絶対に成功させようぜ。この…
“ 引き金をひいたのは ” 」