第106章 ねぇよ
「まずは、脚本を見てもらわないとね。ここに、僕が預かって来た物があるから目を通してくれるかな」
私達は、配られた脚本にそれぞれ目を落とす。鷹匡は当然、もう内容を知っているようだ。私達が読み終わるのを、今か今かと待っている。その様子から、彼がいかにこの物語を気に入っているのかが窺い知れた。
『……』
(これは…)
龍之介は、獣人という変わった役柄。動物達や獣人族をまとめ上げる長である。対する天は、動物の血が混じっていない生粋の人間で、彼もまた多くの者をまとめる王族の立場だ。
獣人と人間、皆んな仲良く平和に暮らす世界。など、そうは問屋が卸さない。
動物と獣人の中には気性が荒い者も多く、龍之介はその全員を上手くコントロール出来ない。人間が育てた作物を荒らし、時には人に怪我を負わせた。そんな状況を重く見た天は、ついに行動を起こしてしまう。獣人達を制圧すべく、銃の製造を始めてしまうのだった。
そこへ登場するのが、天からの遣いである楽。彼は天界の神より、天か龍之介のどちからを葬り去る役目を課せられてしまうのだ。
楽は、悩みに悩む。いくら神の命令とはいえ、出来ることなら両者を生かしてやりたい。だが、時間をかけ彼は決断する。そして皮肉にも、天達人間が作り出した銃を手にするのだった。
楽が、その銃口を向けた相手とは…
『面白い…!』
「さすが、あの先生が書いた脚本なだけあるな」
「うん。続きは一体どうなるんだろう…!」
「それに、とても考えさせられる内容になってる。良い意味で、続きが読めないね」
「ふふ。そうだろう?さぁ、ページをめくってごらん」
鷹匡がにやりと笑い言う。どうやら、結末に相当自信があるらしい。
私達4人は同時に、結末が描かれる続きへと進んだ。