第14章 俺は、あんたより すげぇアイドルに ぜってーなってやる!
『アイドルになるんだ!』
「…アイドル…、わぁ!それって凄く素敵!えりりんなら絶対なれるね!」
アイドル。テレビとかでよく見る、綺麗な格好して歌ったり踊ったりする、あれか。
「あんた、歌上手いの?アイドルって、歌いながら踊りもしなくちゃいけねんだぞ」
俺の挑発的な言葉に、エリはすぐに反応した。
『お、タマちゃん言ってくれるねぇ。じゃあお姉さん今日は特別に、2人の為にライブをやっちゃおうかな!』
「え!いいの?わーい!見たい見たーい!」
目を輝かせて はしゃぐ理。でも、なんだかんだ俺もワクワクした。
俺達を地べたに座らせて、彼女はピアノの前に座った。
『今日は私のライブに来てくれてありがとう!たくさん楽しんでいってね!』
随分と形から入るのだな、と思った。隣に座る理は、手をパチパチ合わせていた。
すぅ、とエリの息を吸う音が聞こえたと思ったら。すぐに初めの一音が飛び出した。
『—————♫』
ビリビリと、空気が振動したみたい。俺と理は、全身でその声と音を浴びた。
複雑なピアノの音色を奏でながらも、繊細かつ迫力のある歌声を放つ彼女を 純粋に凄いと思った。
伝わってくる空気が振動してて、鳥肌がおさまらない。
曲も終盤に差し掛かると、彼女は勢いよく立ち上がって 俺達にウィンクして言った。
『手拍子して!』
言われるがまま、俺と理はリズムに合わせて手を叩く。
するとその音に合わせて、エリは激しいダンスを踊りだす。もちろん歌をうたいながら、だ。
どうしてこんな動きをしつつ、息ひとつあがっていないのか不思議だった。
マイクの代わりに持っているのはボールペンだし、衣装だって普段着。バックミュージックなんかなくて 俺達の拙い手拍子。
なのに…それなのに…。
心を動かされずにいられない。