第105章 幸せになれると思う未来を掴み取るだけ
結局、プライベート携帯の電源を切られてしまう。こんなことをしても、千は仕事用携帯にかけてくるだけなのにと思ったが、私は何も言わずにおいた。
が、案の定すぐにまた着信音が鳴り響いた。私は懐の仕事用携帯を確認する。しかし、ディスプレイは真っ暗なままであった。
「あ、ごめん。俺だ」
龍之介はスマホを取り出し言った。そして4人の輪から外れ、少し離れた場所で応対を始めた。だがすぐに、こちらへと戻って来るではないか。
『?』
「ごめん、春人くん。君に代わって欲しいって…」
『え、はい。
でもどうして私宛の連絡が龍のところに?お相手はどなたなんです』
「えっと…と、虎於くん」
しーーんと、場が静まり返ったのは言うまでもない。
「龍、普通は番号交換しないと思う…」恋敵と
「なんか気が付いたら交換してたんだよね。マジックみたいだった」
「めちゃくちゃ良いようにされてんじゃねぇか!」
私が仕事用携帯の電源を切ったおかげで、龍之介に迷惑をかけてしまった。まぁかかってきてしまったものはしょうがないと、受け取ったスマホに耳を当てた。
楽、天、龍之介も、一体どんな用事なのかと息を殺してこちらに耳を寄せる。
『はい、もしも』
《 あー… もしもし。俺だけど 》
『え?その声は、トウ』
《 この電話終わったらすぐ会いに来て 》
『は?悠?』
《 分かってるとは思うが… 》
『あ、ようやく虎於』
《 愛してますから 》
巳波のその囁きを最後に、私は通話を強制終了させた。