第105章 幸せになれると思う未来を掴み取るだけ
やがて、3人はTRIGGERの楽屋を後にした。すると、天と龍之介がまた何やら顔を突き合わせ頷き合う。次の作戦だ、とか聞こえたのはきっと私の気のせいだろう。気のせいであってくれ。
「ボク、楽のこと好きだよ」
唐突に天のデレを食らった楽だけでなく、私と龍之介も目を剥いた。
「ドーナツ食べたいって言ったら買いに行ってくれるところとか」
「お前が買って来いって言ったんだ!」
困惑気味の楽を尻目に、龍之介がようやく天のアシストに気付いたらしい。
「はっ!お、俺も楽のこと好きだよ!格好良いし、男らしいし!」
「な、なんだよ。嬉しいけど急だな」
「キミは?」
いつかは来ると思っていたキラーパス。それは天からで、何とも威圧的だ。龍之介はにこにこして見守っているし、楽は私の答えを今か今かと待っている。
『え、ええーと…。まぁ、普通に好き、ですけど』
「普通ってなんだよ。俺は普通じゃないレベルでお前が好きだぜ」
『はぁ、どうも』
「楽のどんなところが好きなわけ?」
『その…真っ直ぐで、直球で、ストレートなところとか』
「おい。同じ意味の言葉を3つ並べただけじゃねぇか」
『ふ、不服ですか』
「あぁ。他にもっとあるだろ。ちゃんと考えて聞かせてくれ。あんたが俺のどんなところを良いと思ってるのか」
『ちょ、近っ、』
こういう時の楽は本当にぐいぐい来るから堪ったものじゃない。私は顔を横向けて、精神的にも物理的にも近付いてくる彼を退けようと頑張る。そんな様子を、天と龍之介は満足気に見つめている。この2人の思惑は本当に何なのだ!
そんな時。最高のタイミングでプライベート携帯が鳴り響く。
「…はぁ…。誰から?」
「あぁ!なんて間の悪い…!」
『なんで天は怒っていて、龍はがっくり来てるんですか』
ちなみに携帯を鳴らしてくれたのは、千であった。