第14章 俺は、あんたより すげぇアイドルに ぜってーなってやる!
「ふぅ、美味しかった…ご馳走さま!お腹いっぱいになっちゃった」
ペロリと丸々ひとつ平らげた理は、自分のお腹をさすっている。
『お願いだから、この後出される晩御飯もちゃんと残さず食べてね。私がおばさんに怒られちゃう』
後から分かった事だが、彼女は この施設で心理士をやっている女性の親戚らしかった。
いつまで経ってもこの場所に馴染めない俺達の 遊び相手になる為に呼ばれたらしい。
「ねぇ、お姉ちゃんは、なんていうお名前なの?」
そうだ。俺もずっと気になっていた。彼女はまだ名乗っていないではないか、と。
『あっ、これは失礼…。まだ自己紹介してなかったね。
私は中崎エリっていうんだ。
中崎さんでも、エリちゃんでも、お姉ちゃんでも、えりりん でも、好きなふうに呼んでね』
「「じゃあ えりりん」」
『うーん、やっぱり兄弟だねぇ君達』チョイスが
彼女はそれから 毎週の土曜日、俺達に会いにやって来るようになった。
そして、施設側の思惑通り 俺達は簡単に彼女に懐いた。
彼女といると、心地良かった。まるで母親といた時の自分に戻れたようだった。
だから、最初はこう思っていた。俺は、彼女の事を母親の代わりにしているのだと。
これは “ 愛 ” などではなく “ 親愛 ” なんだと。
「ねぇねぇ、えりりんは、ピアノが凄く上手だよね!たくさん練習した?」
『したしたー、たくさんしたよー。もう白と黒見たら吐きそうになるぐらいしたよ』
そんなふうには見えないくらい楽しそうに弾いていたから、その言葉は少し意外だった。
「じゃあ、ぴあにすと、になるの?」
『ん?違う違う。私はね…』