第105章 幸せになれると思う未来を掴み取るだけ
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すっかり過ごし慣れた、いつもの局。いつもの楽屋。そこで、唐突に天が言った。
「ドーナツが食べたい」
私と楽と龍之介は、ぱちくりと大きく瞬きした。
「なんだ、藪から棒に。今日のケータ、確かドーナツなかったろ」
「うん。でも、どうしても食べたいと思ったから言ったんだけど。だから近くのコンビニで買って来て。楽」
「俺かよ!?なんだその急なパシリ!」
こんな絵に描いたようなワガママを言うなんて、天らしくない。私が首を捻っていると、龍之介が何かを閃いたように、あぁ!と声を上げた。
「楽だけじゃ心配だし、春人くんも付いて行ってあげてよ!」
『いや、そもそも楽が行く必要あります?私が行って来ますよ』
「だめ。ボクは、楽のセンスで選んだドーナツが食べたい」
「何を試されてんだ俺は」
「普通のドナーツでいいんだよ!とにかく、2人で行って来て!2人で。ね?」
私と楽は、顔を見合わせた。まぁリハーサルも済んでいて、本番までは時間もたっぷりある。問題はない。もし問題があるとするなら、それは私自身の中にある。
「んだよ。まぁべつにいいけどな。ほら、行こうぜ春人」
『……はい』
私と楽が出た部屋で、天と龍之介は笑顔で頷き合うのだった。