第105章 幸せになれると思う未来を掴み取るだけ
「相談っていうのは、まさにそのことなんだ」
龍之介も優しいが、それに負けず劣らずエリも優しい心根の持ち主である。そんな彼女だ。龍之介の気持ちを知りながら、楽を選ぶはずがない。
「俺は、2人に幸せになって欲しいと思ってる。でもエリは、俺が近くにいる限り楽の想いに応えることはしないだろうなって…」
「その通りだと思うよ」
「何度も、喉のここまで出掛かったんだ。俺のことは気にしないで、楽と恋人になってくれって!」
「喉のここまでで止まって良かったね」
それでは、まだあなたの事が好きですと言っているようなものだ。逆効果も良いところだろう。
「頼む!天からしたら複雑なのは百も承知だけど、2人をくっ付ける手伝いしてくれないかな」
「…TRIGGERの今後を考えれば、エリは誰とも付き合わない方が良いと思うけど」
「それも分かってる!でも、TRIGGERは何があっても大丈夫だって自信があるんだ。だけど、あの2人は俺達が何とかしないと、いつまで経っても今のままな気がして…。
厚かましいお願いだって分かってる!でもこんなこと、天にしか頼めないから…」
「はぁ…。どうしてボクが、龍のその厚かましいお願いをきくと思ってるの?」
「え?だって、天はボロボロに傷付いた人間に弱いだろ?」
「嫌なつけ込み方やめて!」
だが、龍之介の読みは得てして的確であった。
元恋人の私物を未だ片付けられもしないくらい未練があるにも関わらず、他の男とその人をくっ付けたいと言うのだから。それはなんて滑稽で、なんて真摯なのだろう。そんな深い愛情に、涙が出そうだ。
「どこまで出来るか分からないけど、まぁとりあえずは協力する方向で…」
「天…っ!!」
「感謝してくれてるのは分かったから、その目やめて!」
遠慮なく向けられる龍之介のキラキラ光線を避ける為、ボクは大袈裟に顔を背けた。
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