第105章 幸せになれると思う未来を掴み取るだけ
ボクの目の前に置かれた皿には、ドーナツが3つ。龍之介の前に置かれた皿の上には、1つのドーナツが置かれていた。
皿ごと持ち上げて、まずはひと口齧り付く。甘い物を摂取した後は、必ず運動をすると決めている。これらをなかったことに出来るほどのカロリーを消費するには、どれくらいランニングすれば良いだろうか。なんて考えていたら、手からドーナツが消えていた。本当にボクが食べたのだろうか。もはや記憶にない。
ふと視線を感じて前を確認すると、龍之介が微笑ましい顔でこちらを見つめていた。座りが悪くて、急ぎ足で本題に入る。
「相談があるって言ってたけど、食べながら聞いてもいい内容?」
「うん。大丈…… あっ、まだお礼を言ってなかったよね。わざわざ来てくれてありがとう。天」
「いいよ。龍からの呼び出しなら、いつだってドーナツを持って駆け付けてあげる」
「あはは、本当?嬉しいなあ。でも、それって天がドーナツを食べる理由が出来るからじゃない?」
「ふ、どうだろうね」
軽く笑って、2つ目のドーナツを手に取った。
実のところ、龍之介から相談事があると聞いた時から、内容の予想は付いていた。
「相談っていうのは…
エリと、楽のことなんだ」
予想が的中していたから、何の驚きもなかった。半分になったドーナツを皿において、言葉の続きを待った。
「天も、その…気付いてるよね。
楽と、あと、エリの気持ち」
気付かないわけがなかった。楽はこちらがヒヤヒヤするほど分かりやすいし、エリのことは嫌でも目で追い続けてしまっているのだから。