第14章 俺は、あんたより すげぇアイドルに ぜってーなってやる!
『アヤちゃんは、男の子にいじわるされても泣かなかったから。
それにタマちゃんは…、間違わなかったから』
「…間違わ、なかった?」
どうして彼女が、俺や理の名前を知っているのか。とか細かい事は気にしなかった。
『うん、さっき…アヤちゃんがイジメっ子に捕まりそうになった時、迷わず妹を守りに戻ったでしょ。
男の子に報復をする事を優先しなかった。偉かったよ』
「……ホーフクって、なに?」
『あはは!ちょっと難しかったか。ま、あれだね。簡単に言うと…
頑張ってるタマちゃんカッコ良いなぁ!って、事』
彼女は俺の手の中のプリンを、すっと自分の手に戻すと。封を開けて、ひと匙すくった。
そして俺の口元へ、それを近付ける。
『だから、これはご褒美。王様プリン、嫌い?』
「…ちょう好き」
俺はゆっくりと口を開けた。
母親が、よく買ってきてくれていた王様プリン。言うまでもなく、俺も理も大好きだった。でも、ここへ来てからずっと食べていなかった。
分かってたから。これを食べたら…思い出してしまうって。
風邪の日に母が食べさせてくれた。母と理と3人で、おやつに食べた。母に隠れて 黙って隠れて食べた、あの時の王様プリン。
そう。この味は…あの時のプリンの味と何一つ変わっていない。
「…っ、…ぅ、…ぅうっ、…」
「…兄ちゃん…?どうして泣いてるの?」
「王様、プリンが…っ。美味すぎて…!」
俺は、ボロボロとこぼれ落ちる涙を誤魔化すように、残りのプリンを口の中にどんどん掻っ込む。
『…さ、
次は何を弾きましょうかね』