第104章 爽やかな笑顔だな
小さい頃から、努力を重ねた。アイドルになりたい一心で。しかし、私の夢が叶ったのはたった一日。長年の研鑽と、見合うはすがない。たった一晩しかステージに立てないと分かっていたなら、私はあの日、歌いはしなかったのに。ずっとそう思っていた。
でも、それは違った。その努力に見合う、価値のある物を私はとっくに受け取っていたのだ。
ボロボロに傷付いた彼女が、私の歌で救われていたのだから。
『……ありがとう』
《 え? 》
『私の歌を…聴いてくれて、好きに…なってくれて。私のステージと出逢ってくれて、ありがとう。
やっと…分かった…、私が、たった一日でもステージに立った理由。貴女の居場所を、作る為だったんだね』
《 Lioさん…?泣いて、るんですか?》
『でもね、Keiさん。やっぱり貴女は、私なんか追ってちゃ駄目だ』
《 え?ど、どうしてですか?》
『貴女には、私の上をいくアイドルになって欲しい。私よりも、もっともっと多くを、助けてあげて欲しい。あの時の貴女みたいに、居場所を失って途方に暮れてる人達の為の、居場所を作ってあげて。
絶対に、消えないアイドル。そんな存在に、なって欲しい。お願い』
しんと、私達の間に静寂が流れる。Keiが真剣に考え込んでいるのが分かった。
《 …大好きなLioさんに、お願いされちゃったら私…断れないじゃないですか!》
『!!』
《 ずっと目標だった貴女を超えるなんて、今は想像すら出来ませんけど。でも、努力してみます。
Lioさんがなりたかった、その消えないアイドルという奴を、私、本気で目指してみます 》