第104章 爽やかな笑顔だな
至近距離にあるKeiの顔。見る見るうちに、大きな瞳に涙が溜まっていった。泣き顔を見られたくなかったのか、彼女は勢い良く部屋を飛び出してしまう。
私は乱れた襟を正しながら、黙り込む3人に、Keiを追い掛ける旨を伝えた。
「大丈夫?代わりに俺が探して来ようか?」
『いえ。泣かせたのは私なので』
「そう。じゃあボク達はここで待ってる。でも、無理はしないで。辛くなったらここに帰って来ればいいから」
『ありがとうございます』
ドアに手を掛ける。しかし、楽が何の反応も示さないことがどうしても気になった。
『私は、Lioの悪口を言いましたよ。楽は彼女みたいに怒らないんですか』
「…あぁ、なんだろうな。今までだったら死ぬほど腹が立ったのに。なんかさ、今は申し訳ないって気持ちなんだよ。
俺が何か言ったわけでもないのに、手を上げたわけでもないのに。お前に、謝りたくなる。不用意に傷付けて…。お前の口からあんなこと言わせて、ごめんなって」
『……彼女を探しに行ってきます。泣いた女の子を長くは放っておけませんから』
私は逃げるように、楽の前から姿を消した。
そして、早速Keiの捜索を開始する。捜索の基本は、やはり聞き込みだろう。さきほど素顔を晒したばかりの彼女だ。Keiを見ませんでしたか?と周りを行く人間に聞けば、足取りはすぐに掴めた。
だが途中で、パタリと目撃情報が途絶える。ということは、この辺りでどこかの部屋か空きスタジオに入ったのだろう。時間はかかるかもしれないが、身を隠せそうな場所を手当たり次第に探してみよう。