第104章 爽やかな笑顔だな
「真似じゃない!私はLioのコピー品になりたいんじゃないの!私がLioそのものになって、有名になって、彼女の素晴らしさを世界に広」
『貴女は、賢くて、そして愚かだ』
「!!」
Keiの元に行く私の背中に、天が心配そうな声でプロデューサーと呟いた。龍之介は、苦い顔をして俯いている。
「私は愚かなんかじゃない!!」
『いいえ、愚か者です。Lioになる為に努力をするなんて。全て無駄としか言いようがない』
「……は?」
『もうやめなさい。Lioの背中を追いかけるのは。彼女は、そんな崇高な存在なんかじゃない。貴女のように愛してくれる人を置き去りにして、消えた理由も打ち明けず居なくなるような人間です。
あんな、臆病者…逃げ出した人間を目指してはいけない』
「春人くん!もう、いい。もう、いいよ!」
龍之介は、俯けていた顔を上げて、大きな声で言った。天は、私の背中にそっと手を添える。楽は…眉を寄せ強く目を閉じていた。
そしてKeiは、言うまでもなく怒り狂う。
「お…まえ!!お前っ、Lioのことを悪く言ったな!!謝れ!訂正しろ!」
彼女は私の胸倉を掴むと、そのまま女とは思えない力で壁際に押し付けた。
すぐに仲裁に入ろうとするTRIGGERを、手で制する。それから私は、冷静な表情のままKeiに語り掛けた。
『……私が、貴女を賢いと思ったのは…理解しているから。
もう、Lioがこの世界に帰ってこないこと。もう二度と、ステージに立って誰かを幸せにしないことを、正しく理解しているからです』