第104章 爽やかな笑顔だな
私もずっと引っかかっていた、彼女の物言い。
“ 初めて会えた!彼女を好きだった人に!”
“ Lioの歌を聴けば、誰でも絶対にファンになったに決まってるのにー!!”
“ もう、全国民全世界の人にLioの歌を聴いて欲しかった〜!!”
“ Lioこそ、この世で最も優れたアイドルでした ”
そう。その物言い全て、過去形なのだ。
そして楽に、Lioの真似だと言われたとき、Keiが顔色を変えた理由。それも、過去形で語る理由に通じているのだろう。
「Lioは、もう いないから。
だから、私が Lioになるの」
Keiの表情からは、何の感情も読み取れない。私達は、ただその場に立ち尽くした。
「最高のアイドルは、居なくなってしまった。だから、私が彼女に成り代る。Lioみたいに歌って、Lioみたいに踊って、Lioみたいに笑って、Lioみたいな曲を作って、Lioみたいにセルフプロデュースをするの。
そしたら、Lioが居なくったって私が皆んなを楽しませてあげられる。傷付いた人たちの心を癒してあげられる!だから私はLioにな」
「やめてくれ!!」
楽は叫んだ。聞く者の心を切り裂くような、悲痛な悲鳴。彼は狂気を帯びるKeiに一歩近付き、懇願するように告げる。
「もう、やめてくれ…。あんたが、いくら努力したとしても、Lioには、なれない。あいつの代わりなんて、いるはずがないんだ!
それから…あいつを、過去形で語るのも、頼むからやめろ。
お前がLioのことを過去形で言う度に、あいつが帰って来られなくなる気がする…。あいつのことを、もう世界から居なくなっちまった奴みたいに言うのは 頼むから、やめろ」