• テキストサイズ

引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第14章 俺は、あんたより すげぇアイドルに ぜってーなってやる!




彼女は、無言で俺達の前から姿を消した。


「…兄ちゃん」

「ん…大丈夫、大丈夫だ、理」


俺達は、2人でずっといられれば。それだけで大丈夫だから。
他には何もいらない。

いつか、居なくなってしまうのなら 最初からいらない。

俺の中に、甘さも切なさも。残していかないでくれ。頼むから。


『はいっ。これあげる』


10分足らずで戻ってきた彼女の手には、俺達の大好きな 王様プリン。
それを2つ、こちらに向かって差し出している。


「…わぁ、王様プリンだ…っ、」


理の顔が、パァっと明るくなる。そして、すぐそれに手を伸ばした。俺はそんな理の手から 2つとも取り上げて、ギリギリ届くピアノの上にバン!と置く。


「こんなもんっ、いらねぇ!」

『ピアノの上に、物を、置かない』


さっきまで にこやかな顔をしていた彼女の顔が、一瞬で凍り付いた。ひと睨みされただけで、石になってしまいそうだった。

仕方なく俺は、自分が置いたプリンを再び手の中に戻す。決して、彼女の剣幕にビビったからではない。断じて。


「おかしいだろ、…なんで みずしらずの あんたが、俺らにこんなんくれんの?」

『…んー…そうだなぁ』

「わぁい、いただきますっ」


彼女は考えながら、理の体をふわりと持ち上げて 演奏席に座らせる。そして、俺の手の中からプリンを1つ取って 封を開けて理に渡す。
理はすぐさま、スプーンでそれをすくって口へと運んだ。


『君達が、頑張ってたからかな』

「兄ちゃんも食べなよ!凄くおいしいよっ」


俺は、手の中の王様プリンをじっと見つめた。

/ 2933ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp