第104章 爽やかな笑顔だな
そろっと、私達の前から姿を消すKei。そんな彼女を、楽達が引き留める。
「お疲れ。本番が終わったばっかで悪いけど、今からちょっと話いいか」
「話?まぁいいけど。TRIGGERにはお世話になったし」
その場面を見ていたわけではないが、きっと楽はKeiを楽屋に呼び付けるだろうと思っていた。
適当な頃合いを見計らい、私も4人の後を追うのだった。
静かに扉を開くと、やはり話し合いの真っ最中。Keiが3人に御礼を伝え、そして彼女のステージの成功を労った後くらいのタイミングだろうか。
ちょうど楽が、私も気になっていた質問を口にしたところだった。
「訊きたいことがある。どうしてさっき、Lioの名前をカメラの前で口にしたんだ」
「どうしてって言われても。質問されたことに、答えただけなんだけどな…。あぁでも、もしかしたら知って欲しかったのかもしれない」
「知って欲しかった?」
「そう。Lioの存在を。Lioという、最高のアイドルがこの世にいたこと。彼女の歌がどれほど素晴らしくて、どれほど魅力的だったかを」
胸に手を当て言ったKeiは、何かに取り憑かれているかのようだった。瞬きをすることもなく、声には抑揚もない。
楽は眉間に皺を寄せて、苦しそうに告げる。
「もうひとつ…教えてくれ。
どうしてあんたは、Lioのことを…ずっと、過去形で語る」