第104章 爽やかな笑顔だな
「Lioって…。あ、あぁ!あはは、Lioね!私も、彼女の歌は好きですよー?たしかに、素晴らしいアイドルですよね!」
司会者は必死で話を合わせにかかった。彼がLioを知らないのは、その上ずった声を聞けば明白である。
「そろそろ、お別れのお時間がやって参りました。第2回の放送があるかは分かりませんが、ぜひまたお目にかかりましょう!それでは、さようなら!」
最後にカメラに抜かれたTRIGGERは、もうすっかりいつもの笑顔であった。
そしてスタジオは、生放送の緊張感から解き放たれる。弛緩した平和ムードが漂うが、番組プロデューサーはKeiをすぐさま呼び付ける。
「ちょっと君、困るんだよねぇ。あぁいうときは、もっと知名度のある無難な芸能人の名前挙げてくれないと。インディーズだかデビューしたばっかりのアイドルだか知らないけど、誰も知らない人間の名前出したってさぁ、盛り上がらないの分かるでしょ?あんなのほとんど放送事故じゃな」
「私は訊かれたことに、ただ答えただけじゃな……答えただけ、です」
「なんだ、生意気だな…そんなんじゃ、この世界でやっていけないぞ」
「……はぁ?」
『お話中に、失礼します』
私は、プロデューサーとKeiの間に割って入った。すると彼はパァっと顔を明るくして、体ごとこちらに向ける。
「おぉ春人!久しぶりだなぁ!」
『ふふ、お久し振りです。すみません、お姿を見たらつい話をしたくなってしまって声を掛けてしまいました』
「あはは!いいっていいって!」
『最近、どうですか?こっちの方は』
私は親指で、3つの横並びボタンを押すジェスチャーをしながら問う。
「そうそう聞いてくれる!?こないだまた万枚出したんだよねー」
『相変わらずのヒキ強ですね!』
「しかもさ、1/58253のプレミア演出見ちゃったよー」
『えぇ!?いいですねぇ!』
私は自分の背中の後ろに手を回し、指の動きだけでKeiに伝える。今の内に行け、と。