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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第104章 爽やかな笑顔だな




はっ、と我に返ったのは天。彼は真っ先に、楽の袖口を引いた。それにより自分が立ち上がったことに気が付いた楽は、急いで椅子に腰を下ろした。
なんとか司会者の目につく前に着席は出来たが、もしかしたら電波には載ってしまったかもしれない。私は急ぎ、REC中のカメラの角度を確認した。画角内に楽が写り込んでいたかは、微妙なところだ。


「おっと!あまりに綺麗な顔立ちに、私 仕事を忘れて見惚れてしまいました!今まで顔出しを控えていた理由を、訊かせてもらっても良いですか?」

「まずは容姿どうこうよりも、私の歌を愛して欲しかったからです」

「なるほど。先入観は抜きにして、貴女の歌を好きになって欲しかったわけですね!」


放送終了までは、まだ少し時間が残されている。私は、どうか今の楽に話を振ってくれるなよと、司会者に祈る。
その願いが通じたのか、司会者はTRIGGERに話を振ることはせず、このままKeiとの会話で番組を終わらせることを選んだらしい。


「せっかくなので、もう少しKeiさんのお話を聞かせてもらおうかと思います。
さきほど素晴らしい歌を聴かせてくださったKeiさんですが、どなたか尊敬しているアーティストさんなどはいらっしゃいますか?」


場を繋ぐにはベタな、王道の質問だろう。しかし、私の背中には嫌な汗が伝った。嫌な予感しかしない。出来ることならば、今すぐセットの中に飛び込んで行って、Keiの口を塞いでしまいたい。


「Lioです。彼女こそ、Lioこそ、この世で最も優れたアイドルでした」


私は襲ってきた頭痛に耐えられず、その場で膝を折った。

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