第104章 爽やかな笑顔だな
「さて、いよいよ次のステージが最後となります。とりを飾ってくれるのは、Keiさん!この名前をご存知の方も多いことでしょう。彼女は、現在ラビチューブなどをメインに活動されている実力派アーティストです」
相変わらず、顔を隠してのパフォーマンスとなる。
一体この中の誰が、彼女のステージが成功すると思っているだろう。あの滅茶苦茶なリハーサルを知っているのだから、当然だ。
彼女のことを信じている人間は、TRIGGERと、そして私。後は、Kei本人だけ。
眩しいステージに、曲が鳴る。いよいよパフォーマンスが始まったのだ。Keiの、メディアデビューである。
私達は、にやりと笑った。他の参加者とスタッフ達は、呆気にとられた。
派手なターンも、弾ける笑顔もない。しかし、そんなことが気にならないくらいの、圧倒的歌唱力がKeiにはあった。そしてその歌声は、やはりLioを想像させた。
しかし、Lioを連想するのはLioを知っている者だけ。従って、ほとんどの人間はただただ彼女の歌声に酔い痴れるのみ。
やがて、他の追随を許さないほどの実力を見せつけた彼女のステージは幕を下ろした。
「……は、!あ、ありがとうございました!Keiさんでした!
いやぁ、凄かったですね…。九条さん、いかがでしたか?」
「素晴らしいパフォーマンスでした。この歌に完璧なダンスが乗ったとき、一体どれほどのステージになるのか。それを想像するだけで、ワクワクしてしまいますね」
天のコメントに、Keiはステージの上で深く腰を折るのだった。