第104章 爽やかな笑顔だな
私達も、スタンバイの為に移動を開始する。歩みを進めながらも、私はさきほど2人が楽しそうに意気投合していたシーンを思い起こしていた。
楽が前を歩いている中、私はこそっと天と龍之介に語り掛ける。
『あの。さっきの楽、さすがにテンション高過ぎでしたよね』
「初めてLioのことを語り合える同志が出来たからじゃない?」
『いや、今までもLioが好きだと言う人間はいたでしょう。たとえば逢坂さんとか』
「うーん。壮五くんは男だから。やっぱりLioを好きって気持ちでは、負けたくないって思っちゃうんじゃない?」
『男心、めんどくさ…』
そう呟くと、2人は肩をすくめ笑った。歩く足を早め、私は前を行く楽に並ぶ。
『楽。Lioの話が出来る人間を前に、気持ちが高揚したのは理解します。ですが、あまり特定の女性と親しげな姿を晒さないでください。変な噂が立つといけないので』
一息に私が説明すると、楽は笑いもしないで こう返す。
「もしかして、ヤキモチか」
『……はははっ』
「爽やかな笑顔だな」
そんなんじゃないとか、違いますけどとか答えるよりも、私の気持ちが伝わったらしい。
ようやく楽は薄く笑って、顔を前に戻した。