第104章 爽やかな笑顔だな
「Lioの歌を聴けば、誰でも絶対にファンになったに決まってるのにー!」
「!!そ、そうだよな!!」
「もう、全国民全世界の人にLioの歌を聴いて欲しかった〜!!」
「分かるぜ!その気持ち!!」
収拾をつけるどころが、事態は酷くなるばかりであった。出るわ出るわ、2人の口からLioの褒め言葉が。それこそ、耳を塞ぎたくなるくらいの甘過ぎる褒め言葉。
天と龍之介は、うわぁ…という顔をこちらに向ける。
「は、はは…春人くん、耳まで赤いよ」
「まぁこれは仕方ないと思う」
『ご理解いただいて…恐縮です』
私は両手で顔を覆って、必死にその赤い色を隠した。
「でもやっと謎が解けたよ。お前がどうして、Lioの真似して歌ってんのか」
「は……真似?」
私は瞬時に察した。Keiの声色が、ぐんと低くなったのを。
そして、そんな時だった。スタッフから、参加者全員を招集する声がスタジオに響いたのは。それを聞いた彼女も、ピクリと反応する。
「あっ、Keiさんここにいたんですね!控え室に居なかったら探しましたよ!さ、スタンバイお願いします!」
「……あの」
「はい?」
「よ、よろしくお願い、します…」
礼節を重んじたその言葉に、私達は笑って彼女の背中を見送った。