第104章 爽やかな笑顔だな
Keiの元に行こうとする3人を、私は慌てて止める。
「どうしたの?問題はないんでしょ」
『番組的に問題はなくとも、彼女は…その、なかなか獰猛ですから。貴方達より先に私が行きます』
「あっははは!獰猛って!猛獣じゃないんだから!」
『大切なうちのアイドルが、噛み付かれては堪りませんからね』
「はは。愛されてんな、俺達」
「餌とかオモチャとか持って行く?」
龍之介と楽は笑って、天は真顔で言った。
『こんにちは』
「!!」
『リハ、見せてもらいました』
彼女の顔は面で見えないが、きっと力の限り私を睨み付けていることだろう。
「どうせ貴方も、私の歌を聴いてがっかりしたって言うんでしょ!テレビにも出てことないただの歌い手なんか、こんなものだって思ってるんでしょ!」
『……予想の上をいく獰猛っぷりだな』
「なに!?」
『いえ』
餌付けも、オモチャで仲良くなることも、試すだけ無駄だろう。だったら、いつもの私のやり方でいかせてもらう。
『上手く歌いたいですよね。貴女の気持ち、分かりますよ』
「アイドルでもない貴方に分かるわけない」
『……私の言うことを信じてみませんか。もし信じてくだされば、きっと貴女のステージを輝かせることが出来ます』
「アイドルでもない貴方を信じたりしない」
私はトボトボと、TRIGGERの元に帰る。
「春人くん!?どうしたんだ!そんなに泣きそうな顔になって!」
『心が…心が、折れました』
「噛み付かれた?ねぇ、噛み付かれたの?」
「春人をここまでズタボロに出来るなんて…とんでもねえな…!」