第104章 爽やかな笑顔だな
ごくごく近くから、じぃいぃーとKeiを食い入るみたいに見つめる楽。それを見ていた天は、溜息を吐いた。
「な、なによ!何か私が間違ったこと言ったっていうの!?」
「いや……悪い。それより、あんた」
「早くどいてよね!」
Keiは楽の言葉を最後まで聞かず、扉の奥へ身を滑り込ませた。その背中を黙って見送っている楽に、私達も行きましょうかと告げてから歩き出す。
私の後ろでは、天と楽が会話している。
「そういやあいつと初めて会った時も、あんなふうにツンツンした態度取られたな…」
「楽。彼女は、Lioじゃないよ」
「……分かってる」
それを言われた瞬間こそ、目を見開いた楽であったが、すぐに何かを諦めたように顔を伏せてそう零した。
楽屋に着いた私達であったが、部屋は神妙な空気で満たされた。真剣な表情で、じっと何かを考えている楽。彼から極力離れて、私達3人は小声で会話する。
「楽、もしかしてKeiのことLioかもしれないって期待してたのかな」
「それは分からないけど、彼女とLioに何らかの繋がりがあるとは考えていたかもね」
『それを訊く前に、逃げられちゃってましたけどね。あと、その繋がりがあるなら知りたいのは私の方ですしね』
さきほど実際に話してみて思ったのは、やはり彼女がLioに寄せているのは意図的であること。顔こそ見れなかったが、声も背格好も、非常にLioと近かった。
だが、彼女がどうしてLioに寄せているのかという理由までは分からない。それを知るには、もう少しKeiと関わり合いになるしかないだろう。
そして楽もきっと同じ理由で、彼女との対話を考えているはずだ。