• テキストサイズ

引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第104章 爽やかな笑顔だな




来たる本番当日。
制作スタッフ達への挨拶を済ませ、私とTRIGGERは自分達の控え室に向かう。その道中だ。出演者が控えている大部屋の前を通りがかった。やはり個別に部屋が与えられるわけではなく、大部屋のようだ。
“ 輝け 未来のスーパースター、出演者様控え室 ” という張り紙を前に、TRIGGERは立ち止まる。


「皆んな、今頃きっと緊張してるんだろうなあ。ねぇ、ちょっと声掛けたりしたら…迷惑かな?」

「駄目。さっき説明受けたでしょう?向こうからボク達への挨拶は、遠慮してもらうよう統一してるって。それなのに、こっちから急に出向いたら、驚かせるよ」

「そ、そうだよね。ごめん、我慢します」

「ふふ。龍は優しいんだから」


天と龍之介が話している間、楽はじっと大部屋の扉を見つめていた。物凄い気迫。部屋の中を透視でもするつもりだろうか。

そろそろ行きましょうか。そう私が促そうとした、その時。


「邪魔」


その凛とした声を受け、私達が揃って振り向くと、そこには狐の面を着けた女性が仁王立ちしていた。疑いの余地はない。彼女こそが、歌い手のKeiだ。

だが、まさかこういうタイプの人間だとは誰も予想していなかった。この後 自分の歌を聴くことになる大先輩に、第一声で邪魔と言い放つなんて。
そしてこういう時、真っ先に声を返してやるのは龍之介だ。


「あっ、ごめん!こんな場所で立ち止まってたら、そりゃ邪魔だよね」

「大の男が4人もいて、入口塞いでるのも気付かないなんて。どいてくれるなら、良い…け、ど?」


彼女の語気が、見る見る弱ったのには理由があった。彼らがTRIGGERだと気付いたからでも、龍之介の優しい笑顔に見惚れたからでもない。
理由はひとつ。楽の視線が、あまりにも無遠慮だったからだ。

/ 2933ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp