第104章 爽やかな笑顔だな
「か、過酷だね…。リハの時間も限られてるし、しかも生なんだ。俺達も、初めてカメラの前に立った時と生放送の時は緊張したよなぁ」
「あ、あぁ…そうだな」
「そういう過酷な状況を乗り越えてみせろ、本物のスターになりたいならって趣旨の番組なんじゃない?」
「そっか。天が言うと、なんだか説得力があるよ!」
全体の流れをザックリ説明していき、いよいよ最終ページまでやって来た。そこには、ある驚きの内容が記されているのだ。
「Keiって子がトリなんだ。この子、話題になってるから知ってるよ!確か、顔出ししてないん……。えっ!?番組の中で、お面取るの!?」
そうなのだ。龍之介が言った通り、彼女はこの日、秘匿を貫いて来た素顔を晒す。どういう意図があって、そんな行動に出ると決めたのかは分からない。だが、憶測を立てることは出来る。
Keiは、この番組に懸けているのではないだろうか。ちょっとテレビに出てみたい。知り合いに自慢出来るくらいの知名度が欲しい。そんなレベルの話ではなく、これを機に業界に飛び込んでやる。くらいの気概を感じる。
それこそ、過去の私がLioとしてトップアイドルを目指していた時のように。
『龍は、Keiの歌を聴いたことがありますか?』
「実は、まだないんだよね。でも早速、今日にでも聴いてみるよ」
『…が、楽は…Keiのこと、知ってました か?』
「………え?あ、あぁ悪い。ちょっと、ぼーっとしちまってた。何だって?」
私と天は顔を見合わせる。そして “ これは絶対知っていたし、歌も聴いたことあるやつだ ” と頷き合った。