第104章 爽やかな笑顔だな
意図せずに、ここまで似るのはあり得ない。私は、出来る限り彼女のことを調べようとした。しかし見つかるのは、Keiとは縁もゆかりもない赤の他人が立ち上げたまとめサイトだけ。そこにすら大した情報は載っていなかったし、そもそも真実かどうかも怪しいものである。
もし彼女がテレビに出ていたなら、もう少しは詳細が掴めただろう。これも、ネットを軸にして活動している者の特徴だ。とにかく情報が集まらない。
ちょうど、そんなタイミングだった。TRIGGERに、こんな仕事が舞い込んだのは。
「輝け 未来のスターアイドル?」
楽は、手にしたばかりの企画書のタイトルを読み上げた。
『はい。なんともシンプルで分かりやすい番組名ですよね』
「あはは。確かに、それを聞いただけで番組の内容が分かったよ!」
「ボク達は、番組に登場する新人さん達のパフォーマンスを見て感想を伝えるんだね」
企画書に目を落としたまま告げた天に、私は頷く。
まさしく、いま天が言った通りだ。メディアへの露出がまだない、もしくはほとんどないアイドル達にスポットライトを当てた番組。そんなブレイクを夢見て活動する人達が、TRIGGERや他の著名人達の前でパフォーマンスを披露する。それに対し、感想を述べたりやアドバイスするのが今回の仕事内容である。
『シンプルな内容なので、あまり詳しい打ち合わせは必要ないかもしれませんが。一応、さらっとは擦り合わせさせてください。
では、本をめくってもらって』
「!」
私の指示通り、3人は企画書のページを1枚繰(く)る。そこにあったのは、パフォーマンスする側の出演者一覧。
その中に、Keiの名前を見つけた天が反応したのだった。私はそんな彼に、こくんとひとつ頷いた。
その後に、楽の表情を盗み見る。
彼もまた、並んだ出演者の名前を見つめていた。楽は、Keiのことを知っているのだろうか。Lioによく似た、彼女の存在を。
楽の真剣な表情からは、それらは読み取れなかった。