第14章 俺は、あんたより すげぇアイドルに ぜってーなってやる!
当たり前のように、俺達の前にはトラブルが溢れていた。
「…兄ちゃん、私の…お絵かき帳が、ないの…」
理は、目に涙をいっぱいためて俺を見上げる。俺はしっかりと理の手を握って辺りを見渡す。
すると、ニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべて こちらを見ている奴等がすぐ視界に入る。
理の手を離し、俺は3人いる奴らの1人に殴りかかった。
「お前が!理のノート、とったんだろ!!」
「うわ!なんだよ!なんかショーコでもあんのかよ!」
証拠なんかなくても、こいつらはしょっちゅう理に絡んでる奴等だった。今回もこいつらに決まっている。
「せんせー!また環が暴れてるー!」
カッとなると、周りが見えなくなるのは 昔も今も一緒だった。ただ相手の顔面を殴る事だけを考えて。あっという間にマウントをとる。
その時
「っ、兄ちゃん!」
「理!」
俺に助けを乞う理の叫びが耳に届いた。奴等の内の1人が、理を捕まえようと追いかけていた。
俺は、下に組み敷いた奴を結局殴る事なく。すぐさま理の元へと駆け寄った。彼女を背中に庇い、イジメっ子達と睨み合う。
「また貴方達なの…!」
騒ぎを聞きつけた職員が、子供に手を引かれて駆け寄ってくる。
俺は急いで理の手を取ると、部屋を飛び出した。
向かう場所は、いつも決まっていた。滅多に使われる事のない、グランドピアノが置いてある部屋。そこを勝手に、俺と理の隠れ場所にしていたのだ。
俺と理は、素早くピアノの下に潜り込み 息を殺す。
「……兄ちゃん…」
膝を抱えて俯く俺に、理が悲しそうな声で俺を呼んだ。
今更になって、揉み合いになった時に出来た傷が痛む。
あとは…心も、痛んだ。