第103章 ただいま
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私が宇津木士郎へ引き継ぎをしたように、私も姉鷺から引き継ぎを受ける。そこまで時間は要さないとは思っていたが、念には念をと1週間の期間を設けていた。
やはり予想通り、人間関係も請け負っている仕事も、私が付いていた時とさほど大きくは変わっていなかった。おかげで、余裕を持って作業を終えることが出来たのだった。
今日は、姉鷺の付き添いなしで、久々に私1人でTRIGGERの仕事に同行する。そして、まるで図ったように今日は特別な仕事が入っていた。
なんと、NEXT Re:valeにゲスト出演を果たすのである。しかも今日は、Re:valeが岡崎事務所に復帰をしてから初の放送。そんな記念すべきタイミングで、TRIGGERをゲストに選んでくれた関係者には頭が上がらない。
早速、私達は彼らの楽屋へと挨拶の為 足を運ぶ。しかし…
「わあ、凄い人の数だ!皆んな、Re:valeさんへ挨拶する人達だろうね」
「スタッフさんもタレントさんも、2人が事務所に復帰するのを待ち望んでいたから」
「だな。これだけの人が楽屋を訪れるのも、百さんと千さんが皆んなに愛されてるって証拠だ」
2人の楽屋の前には、長蛇の列が出来ていたのだ。ボク達も並ぶ?と天が私に目配せをしたが、ゆるゆると首を振った。この盛況具合では、いつ2人に御目通りが叶うか分からない。タイミングをずらすとしよう。
自分達の楽屋へと帰ろうとした、その時だった。廊下の向こうから駆けて来るのは、両手にいっぱいのペットボトルを抱えた岡崎凛人だ。予想を遥かに上回る来客数に、飲み物が足りなくなって買い出しに出ていたのだろう。
「あっ、皆さん…!もしかしてご挨拶に来てくれたんですか!?でしたらすみません、今こんな状態でして!」
『いえいえ、こちらこそ間が悪い時に出向いてしまって申し訳ありません。また出直します』
凛人は、また丁寧に頭を下げてから楽屋の中へと消える。同情したくなるくらい忙しそうであるが、その顔はキラキラと輝いて見えた。