第103章 ただいま
すやすやと寝息を立てる楽を尻目に、天が私に問う。
「キミ、ボクらの元に帰って来るか少し迷ってたでしょう?それってどうして?」
『う…っ。天、貴方ってどうしてそんなに鋭いんですか』
「えっ、本当に!?迷ってた、って…どうして!」
「さぁね。それをボクも知りたい。ねぇ、どうして?」
驚く龍之介も、こちらをじっと見つめて答えを待った。それにしても、天のこの表情。
少し拗ねたような、年相応の悲しげな顔をするのだ。いつもは大人びていて、すました顔をしているくせに…たまに可愛げを出してくるのは本当に狡いと思う。まさか、わざとやっているのだろうか。
ギャップに弱い私は、何でも答えてやりたくなってしまう。ちらりと、楽が寝ていることを確認してから返答する。
『まぁ…その…どう言えばいいか難しいんですけど、ね?ほら。楽って…私のこと好きじゃないですか』
「は?ボクも好きだけど」
「それだったら、俺も…」
『いやそういうことではなく!
もう、そろそろ…私の正体を隠しておくのも、限界かなって』
楽は本能的に、そして確実に、私がLioだと勘付き始めている。私が最も恐れているのは、私という存在がTRIGGERの輪を乱すこと。楽が私の正体に気付いた時、4人の関係は今以上に拗れるだろうと思っていたのだ。
『もしも楽が、真実を知ってしまったら…どうなってしまうのか。怖かったんです』
「春人くん…」
「まだ起こってもいない事態に怯えるくらいなら、もういっそ言っちゃえばどう?」
『ふふ…簡単に言ってくれますね』
「ボクには自信があるから。キミの正体が誰に知れたって。誰とどんな関係になったって。
TRIGGERは、TRIGGERのままなんだ」