第103章 ただいま
楽しい歓談の最中というのに、突如として隣から、ゴン!と鈍い音が響いた。何事かと隣の席に視線を向けると、なんと楽がテーブルに突っ伏して眠っているではないか。
いつもより赤い顔でふにゃふにゃ笑っていると思い見ていたのだが、珍しく酒のまわりが早かったようだ。というか、彼の額は無事だろうか。
「楽、今日は特に朝 早かったみたいだからなあ」
『そうなんですか』
「うん。1人ロケで、3時起きだって言ってたかな」
『それはもう夜ですね!』
龍之介は、楽がしっかりと握っていたワイングラスを優しく指から外してやる。
『でもまた、随分と過酷なロケだったんですね』
「ボクらが追い詰められてた時、助けてくれたスポンサーが用意した仕事だったみたい。姉鷺さんと社長は、内容が内容だけに必死で止めてたけど…。楽が、借りは返せる時に返しとくもんだ!って強行したんだよ」
「はは。そうそう。凄い気合い入れてたんだから!でも、俺もその気持ち分かるな。オファーされたのが楽じゃなくて俺だったとしても、間違いなく行ってたもん」
なるほど。楽が疲労困憊である理由は分かった。そのせいで酒のまわりも早かったわけだ。しかし新たに気になるのは、そのロケの内容だ。
『姉鷺さんと社長が、そこまで強く止めるほどのロケの内容って一体…』
「あー…それはね」
「たしか沖縄に行って、野生の蛇とマングースを探し出して捕まえて、どっちが強いのか戦わせる。って内容だった」
『もうどこからどうツッコめば良いのやら』
泥に汚れた楽が、左手にハブ。右手にマングースを持って笑っている姿を想像する私であった。