第103章 ただいま
社長の大きな声よりも、私を驚かせる出来事が起こる。社長室に、三人が一斉に飛び込んできたのだ。三人とは勿論、楽と天と龍之介である。
それはもう息が止まるほど驚いた。社長も姉鷺も固まってるところを見ると、2人が呼んだわけではないらしい。額に汗を浮かべ肩で息をする彼らは、一目散に私を取り囲む。
「春人お前…!いつ戻っ」
「春人く…っ、あぁ、本当に春人くんだ…!さっき、社員さんに君が来てるよって教えてもらって!」
『え、いや…ちょ、近っ』
ぐいぐい距離を詰めてくる2人に、私はじりじりと後退る。まだ心算も、用意するべき言葉も思い付いていないのだ。とにかく少し待って欲しい。
が、後ろへと下がる私の腕を天が握った。ぎゅっと。それはそれは、力強く。
私はまたも、息を飲む。天の手が、震えていることに気が付いたから。
「今だから、言うけど。本当は少し、自信がなくなってた。もしかするとキミは、ボクらのところに帰って来ないんじゃないかって。ŹOOĻの方を、選ぶんじゃないのかって…」
あぁ。私は、何をごちゃごちゃと、意味のないことを考えていたのだろう。
「本当に、良かった。嬉しい。
ありがとう。ちゃんとここに、帰って来てくれて…ありがとう」
心はこんなにも、彼らと歩むことを望んでいたのに。
彼らの心はこんなにも、私を求めてくれていたのに。
『天…』
私の腕を掴む天の手に、そっと自分の手を重ねた。すると、楽が勢い良く私と天の肩を力強く抱いた。
「お前、戻れるようになったんなら早くそう言え!俺らがどんな気持ちで、ずっと待ってたと思ってる!あんたは、いつもそうやって、大事なことほど、俺達には後回しにし…、っ!くそ…っ!」
伝えたい言葉があるのに、声を詰まらせてしまうのが悔しいのだろうか。楽は悪態をつきながら、私達の肩を抱く腕に力を込めた。
そんな3人を、龍之介がまとめてガバっと抱く。
「春人くん!やっと…やっと、4人が揃った…!うぅ、ずっと待ってたんだ、俺達。また一緒に…君とTRIGGERが、一緒に歩いていける日を!」
『……は い…。はい…!』
「おかえり、春人くん!」
「プロデューサー。おかえりなさい」
「春人!おかえり!」
『……はい、ただいま』