第103章 ただいま
ŹOOĻは変わった。ŹOOĻが変われば、彼らを見る周りの人間の目も変わる。もう4人のことを、ツクモのヤラセアイドルと呼ぶ者はいないだろう。よっぽどの粗相をやからさない限り、立派なタレントとして扱ってもらえるのは間違いない。
私なんかが何をしたというわけでないが、彼らと共にここへ来られたことが嬉しい。ŹOOĻがここから、さらにどんな場所へと上っていくのか見守りたい気持ちも芽生えるというものだ。
それから収録を無事に終え、私は事務所に帰り事務作業に取り掛かる。こういう細かい仕事も毎日やっておかないと、溜め込むと大変なことになるからだ。塵も積もれば山となる、の嫌な例である。
パソコンと向かい合っていると、部屋に4人がやって来る。
『あぁ、もうこんな時間なのですね…。すみません、すぐ送迎の準備をするので少し待っ』
「あ、あのさ…。どう切り出したら良いのか悩んだんだけど、その…あんたさ、いつまで俺達と居るつもりなんだ?」
「トウマ。流石にその言い方はどうかと思うが…」
「同意です」
「ち、違…!一緒に居るのが嫌って意味じゃなくてだな!あぁもう!大体分かんだろ…!」
トウマは、頭をガシガシ掻きながら続ける。
「つまりほら、あれだよ。
あんたには、帰る場所があるだろ?了さんも、もう俺らのこともあんたのことも解放したんだ。もう何の障害もなくなった今の状況で、お前がここに残ってる意味が知りたい」
『なるほど、つまり…
私がŹOOĻの側にいては迷惑だと?』
「いやだから!なんでそうなるんだよ!!」
「あーあー。トウマの説明が下手なせいで、春人のこと傷付けたー」
『しくしく』
「俺か!?俺が悪いのか!?」
「あぁ可哀想に。狗丸さんには、私が “めっ” てしてあげましょうね」
「巳波の めっ、か…。怖いな」
虎於が遠くに視線を投げ呟いたところで、私は泣き真似をやめる。これ以上トウマを揶揄っては可哀想だろう。