第103章 ただいま
『…間もなく、本番です。皆さん、リハと同じ調子で…どうか収録もよろしくお願いしますね…』
「な、なんでそんな疲れてるわけ!?」
楽屋に戻った私が4人にそう告げると、悠が驚きの声を上げた。トウマは、誰かに何か嫌なことをされたのか!大丈夫か!と駆け寄ってくれる。そんな優しい彼に、笑って首を振ってみせる。
すると今度は、巳波が私の目の前に歩み出た。そして、いかにも深刻そうな顔を作って至近距離から覗き込み告げる。
『なんですか、その怖い顔』
「……悪縁が、貴女に絡み付いているのが見えます」
『は?』
「古い縁だからと、それが良縁だとは限りませんよ?悪縁は蛇のように絡み付いて、貴女の幸運を貪ります」
『あぁすみません。私、占いってあまり信じていないんですよね』
「そうですか、残念です」
一旦は会話を終わらせ、彼に背中を向ける。だが、ちなみに…と、再び巳波を振り返る。
『貴方が言うその悪縁とやらは、どう対処するのが正解なんです?』
「断ち切るべきですね。それはもう、ズバ!!っと」
『なるほど。そうすれば、私に幸運が訪れると?』
「えぇ。差し出がましく、さらにアドバイスを付け加えるなら…
貴女の目の前にぶら下がってる、新しい縁。それを、掴み取るべきですね」
そう言う巳波は、妖しげに両目を細めた。私は乾いた笑いをこぼしてから、背筋を伸ばして頭を切り替える。
『さ、そろそろスタジオに行きましょうか。今日も、先日のライブのようなパフォーマンスをよろしくお願いします』